建築生産は、建築がどのようにつくられているのかを学ぶ学問です。建築をつくりだす過程でのステークホルダーの役割や材料・機器の選定要因、それを取り巻く法制度や慣習など地域固有の社会システムを勉強します。これまで、日本だけでなく、東南アジアや南アジア、中東やヨーロッパなど、様々な国を訪れ、現地の技術者や技能者の話を聞き、資料を集め、調査を行ってきました。それぞれの地域で異なる価値観があり、必ずしも技術的に優れた材料や工法が受け入れられるわけではない実情があります。建築の実務では、多種多様なステークホルダーによって、それぞれの思惑や制限の中で、可視化できない(目に見えない)形で物事が決められていることもあるのです。社会の複雑な仕組みを、一つ一つ丁寧にひも解いていく活動をしていきます。
また、建築の実性能を決定づける重要なポイントとして、施工現場における技能教育にも取り組んでいます。グローバル化が進む中、日本の建設市場では人で不足の解消に海外からの建設労働者の受け入れが始まっています。労働者を送り出す開発途上国の技能教育の在り方や、技能者が母国に帰った後、学んだことをどう活かしていくのか、国際移動による技術伝播メカニズムを明らかにします。