真に豊かな社会とはどんな社会でしょう。お金があることでしょうか。好きなモノが手に入ることでしょうか。私は、人が老いた時、弱い立場になった時、どれだけ温かく包み込み、支えることができる社会や環境、暮らすための場所があるか、ということだと考えます。つねに弱い人の立場に立ち、弱い人のことを考えてつくる建築。「福祉」とは”well being”=人の幸せを願うこと。人それぞれが幸せに、そして豊かな気持ちで暮らすことができるための建築のあり方を追究します。
自分の目の前にいる人がどんな表情や様子で、どんな気持ちでその場や状況を経験しているのか。建築を考えるためには、今そこにいる人をつぶさに観察し、理解することが大切です。それが建築を進めるためのスタートラインだと思いますし、どんな時でも人を中心にして考える学問が建築計画学です。
私は、超高齢社会の現在、そしてこれからにおける福祉建築やその居住環境のあり方を研究しています。高齢期は人生で最も充実した時間ですが、同時に身体的にも困難や課題を抱える時期です。その時にこそ豊かに過ごせる建築や場のあり方を考えます。