建築構造の最終的な目的は、大災害時での安全を確保することです。しかし、単純に「安全」という言葉を使っても、分らないことが多いでしょう。2011年東北地方太平洋沖地震の時には、写真(左中)に写っている本学の鉄骨構造物の一階部分の制振装置が壊れました。装置が壊れたからこそ、その役割を果たし、構造自体が無損傷で済んだという見方がされています。問題となるのは、この構造装置がこれから使えるのかどうかということです。言い換えれば、この建物・構造は安全なのかどうか、さらには、地震前より安全にすることが可能なのか、ということでしょう。ちなみに、制振装置が壊れたというのは、世界で初めてのケースなので、誰もその後のことはわかりませんでした。
建築学科の構造系の教員と大学院学生とが一丸になって、膨大な量のシミュレーション解析や実験を行うことでひとつの結果を得ました。従来の制振装置よりも安くて性能の良い免震装置を開発し、その設置を大学に提案し、採用されました。これにより世界で初めてのハイブリット制振構造物が誕生したのです。その後の実験の地震の記録で明らかになったことは、この装置によって建物の耐震性能が回復しただけではなく、311地震前よりも向上したということです。言い換えれば、制振と免震の混用(ハイブリット)により、耐震性能をさらに向上させることが可能となったということです。