建築学専攻の大学院生が「2022年日本建築学会優秀卒業論文賞」を受賞しました

建築学専攻博士前期課程1年生の黒羽巧真君(不破研究室)の卒業論文が「2022年(第33回)日本建築学会 優秀卒業論文賞」を受賞しました。

建築学生にとっての最高賞でもあり、昨年度の応募卒業論文の中から選抜される日本建築学会優秀卒業論文賞に、黒羽君の卒業論文「街道沿いに面するトタン葺民家の構成とその変容過程に関する研究-福島県会津若松市大戸地区を対象として-」が選出されました(受賞者一覧はこちら)。
 

以下、受賞した黒羽君のコメントです。

<受賞者の言葉>
・論文について
1・2章では、研究背景と対象地の特性をまとめました。会津地域に通っている会津五街道や脇街道の道程や宿駅の位置を各街道に対し参考文献を基に調査しました。福島県立図書館にしか所蔵していない文献もあったため、必要な文献を準備することに苦労しました。歴史に関しては合村絵図や会津風土記(会津藩が発行した地誌)などの史料を活用し、対象地域の成り立ちの分析を試みました。
3章ではトタン葺民家の配置特性の分析、4章ではその変容過程の分析の結果をまとめました。その際、図表にまとめる際にそれぞれの項目を定形化(図のサイズを揃える・敷地境界線を赤い線で書く、敷地規模や方位などの細かい情報を忘れない)し、見やすくすることを心がけました。4章で使用した変容パターンの図はスケッチアップ(3Dソフト)でトタン葺民家をモデリングし作図することで、立体表現する際の違和感を抑えました。
1月末の学内提出を終えた後も、論文冊子とするために2月から3月の初旬にかけて修正作業を行いました。これらの作業を最後まで丁寧に行ったことが優秀卒論賞受賞の一端になっていると考えています。

・執筆中に心がけたこと
論文執筆中に最も心がけたことは「読み手」の立場になって書くことです。当たり前のことですが、読み手は対象地域の様子は全く分からず、提示される絵図や史料を目の間で見たわけではないので、図を見なくても分かる文章の作成を行うように指導教員の不破先生から指導を受けていたため、図の情報を最大限引き出した文章を執筆しました。また、文章の言い回しなどは建築学会の「計画系論文集」など発表されている論文を参考にしました。

・受賞の喜び
以上の作業を行うにあたり、膨大な作業時間が必要であり、朝から晩まで作業を行い、身体的、精神的に非常に追い込まれましたが、最後まで論文の執筆を真摯に行ったことで、優秀卒論賞に出品できる論文が完成でき、並びにその論文が認められ賞を受賞でき大きな達成感を感じています。
最後に、本論文を執筆するに当たり最後までご指導いただいた不破正仁准教授、対象地域の調査をするに当たりご協力いただいた地域の方並びに大戸公民館の職員の方に感謝申し上げます。
実は、この夏、コロナ禍の影響で延期になっていた大戸地区の民家実測調査を行うことになりました。大変ありがたく有意義な機会ですので、しっかりと調査を進めたいと思います。そして、今後も本研究をより深めるべく研究活動を続けてゆく所存です。

<指導教員からの祝辞>
黒羽巧真くん、日本建築学会優秀卒業論文賞おめでとうございます!
黒羽くんの卒業論文「街道沿いに面するトタン葺民家の構成とその変容過程に関する研究〜福島県会津若松市大戸地区を対象として〜」は、会津中街道沿いに現存するトタン張り茅葺民家の町並みを対象としたもので、当地区の民家の構成とその変容を丁寧に記述した優れた論文です。
特筆すべきは、現存する民家全てを悉皆的に調査し、かつ、可能な限り敷地の実測調査を並行して行い、各屋敷の敷地利用の記録を採集するという忍耐力、その成果を元に農家型民家が街道に連続する際の敷地利用の特質を明示し、トタン張り茅葺民家の構成とその連続性を記述し直したという概念的な新規性、等々の諸点において研究史に新しい地平を切り開いた論文に仕上がったことにあると思います。とりわけ、1集落のみならず、街道沿いの3集落全てを対象とし、特質を導出している点が特徴といえ、これらの調査を全て一人でこなした点など、学内の審査会でも高い評価を得ました。
そのため、建築学会の優秀卒業論文賞への応募をすすめ、梗概の作成、論文の修正作業を指導しました。それらすべての作業が実を結び、卒業論文としての最高の栄誉を手にするに至りました。研究室としても大変光栄なことで、後輩への良い刺激になることは間違いありません。
黒羽くんは、修士課程に進学し今も研究室活動に精を出しています。研究室で取り組む地域活動を通して、より成長し、さらなる高みを目指して、研究活動を継続してくれることを願っています。
この度は、本当におめでとうございます!不破正仁

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