時の流れとともに醸成される建築の価値を評価する
近年、国立西洋美術館をはじめ、公共建築物を保存・再生し活用する取り組みが増えています。逼迫した経済状況を背景としてコスト縮減など更なる効率化が求められる中、これらの公共事業については従来の費用対効果による評価だけではなく、時間の経過とともに醸成される建築物の歴史性・文化性や住民の愛着、景観上の価値といった多様な側面を適正に評価することが求められます。
私たちの研究グループは、持続可能で活力ある社会の実現に向け、建築物の長寿命化を研究テーマのひとつとしています。建築物がよりよく歳を重ねていくために、経年による劣化メカニズムの解明や残存する建築性能を把握するための検査手法の開発、そして適切な維持管理のしくみに関する研究に加えて、これまで必ずしも十分に評価されてこなかった建築物の社会的価値に関する評価方法の提案など、建築生産にかかるハード分野からソフト分野まで幅広く研究を行っています。
地球環境問題や廃棄物問題が深刻化し、スクラップ&ビルドのフロー消費型社会から「いいものをつくりきちんと手入れして長く大切に使う」というストック型社会への転換が図られている現在、良好な建築ストックを有効に活用し、真に豊かで成熟した住環境を形成するために実践的に取り組んでいきたいと考えています。