【研究室活動】
【研究室の論文テーマ】
【研究室の概要】
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【研究室のトピック】
・研究室の4年生が交換留学の協定にもとづき台湾の中原大学設計学院建築学科に短期留学してきました。
【研究室の論文テーマ】
2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度
2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2005年度 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度
2020年度
・特別養護老人ホームの建て替えに伴う環境移行に関する研究~建て替え前後による入居者の行動と空間利用の様態~ PDF
・地域密着型のユニット型特別養護老人ホームの平面計画に関する研究〜既往研究データとの比較と他機能との複合状況の分析〜 PDF
・石巻市共助型復興公営住宅における共助と生活の実態に関する研究 PDF
・高齢者介護施設における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスター発生の現状と課題 PDF
2019年度
・障害者支援施設の建て替えに伴う環境移行に関する研究~建て替え前施設における支援の様態~ PDF
・特別養護老人ホームの建て替えに伴う環境移行に関する研究~建て替え前施設の入居者及び介護職員の行動と空間利用の様態~ PDF
・平面図分析にもとづくユニット型高齢者介護施設の平面計画の実態―近年の計画事例の分析から― PDF
・認知症対応型通所リハビリテーション施設における物理的環境の改善と職員の意識に関する研究 PDF
・共同居住型災害公営住宅における経年調査による共助関係に関する研究相馬市長屋型災害公営住宅における事例調査 PDF
2018年度
・東日本大震災における計画的避難区域への帰還とそれに伴う生活の変化について~福島県飯舘村における2事例の調査より~ PDF
・過疎地域における在宅認知症高齢者の居住を支える環境要素についての研究~一事例の調査を通して~ PDF
・福祉施設における木造・木質化の実際と可能性~5つの事例による調査から~ PDF
・障害者支援施設における知的障害者の生活と空間利用の実態~築45 年を迎えるF施設における分析~ PDF
2017年度
・熊本地震以降に建設されたバリアフリー型仮設住宅の計画の経緯と実際 PDF
・ユニット型特別養護老人ホームの職員による環境評価と空間に対する意識に関する研究~仙台市Tホームにおける調査(開設4年後4回目)から~ PDF
・高齢者介護施設における居住を支える物理的環境要素に関する研究~介護職員へのアンケート調査を通して~ PDF
2016年度
・長屋型災害公営住宅の空間特性と暮らしの様態に関する考察 ~相馬市の3事例を通して~ PDF
・特別養護老人ホームにおける看取りと空間利用に関する研究 ~看取り事例からみたそのプロセスと諸室利用~ PDF
・高齢者介護施設と地域とのつながりに関する考察 ~石川県加賀市にある小規模多機能型居宅介護の取り組みから~ PDF
2015年度
・ユニット型地域密着型特別養護老人ホームにおける介護と生活の考察 ~行動観察調査による空間利用と行為の分析から~ PDF
2014年度
・ユニット型特別養護老人ホームの職員による環境評価と空間に対する意識に関する研究 ~仙台市T ホームにおける一年間にわたる継続調査から~ PDF
・地域密着型・ユニット型特別養護老人ホームの平面分析に関する研究 PDF
2013年度
・ユニット型特別養護老人ホームの職員による環境評価と空間に対する意識に関する研究 ~宮城県仙台市Tホームにおける事例考察 PDF
・パンフレットにみる建物と空間の記載に関する実態 ~小規模多機能型居宅介護事業所における考察 ~ PDF
・東日本大震災における福祉仮設住宅の建築計画的課題の抽出と分析 ~立地と平面計画の考察を通して~ PDF
2012年度
・住民主導型の高齢者施設計画の実践とそのプロセスに関する調査研究 ~奥州市胆沢区における取り組みから~ PDF
・立地条件の異なる福祉仮設住宅における住民との関わりと外出行動に関する研究 ~福島と宮城の2 つの事例考察を通して~ PDF
2011年度
・東日本大震災時における宮城県内の大学生の被災と行動の実態 PDF
・東日本大震災における高齢者施設の被災実態に関する研究 PDF
・震災における医療・福祉サービスの被災と復旧に関する調査研究~宮城県山元町における事例考察~ PDF
・震災によるグループホーム型仮設住宅への環境移行がもたらす認知症高齢者への影響 PDF
・サービス付き高齢者向け住宅の居住者属性と居住実態に関する研究 PDF
2010年度
・全国のユニット型高齢者居住施設の空間整備の実態~平面分析による考察から~ PDF
2009年度
・全国のユニット型高齢者居住施設の空間整備の実態~平面分析による考察から~ PDF
・宮城県の小規模多機能サービス拠点の整備と利用の実態から見た考察 PDF
・小規模高齢者施設における防火安全対策~認知症高齢者グループホームと小規模多機能型居宅介護を対象として PDF
2008年度
・全国のユニット型高齢者施設における平面分析と考察 PDF
・東北6県のユニット型高齢者施設の空間構成に関する考察 PDF
・独り暮らし高齢者の地域・在宅居住を支えるサポートシステムの実態~仙台市Y地域における事例考察を通して~ PDF
2007年度
・ユニット型特別養護老人ホームの建築計画に関する研究~従来型施設との比較考察を通してみた利用者の空間利用と関わり PDF
・ユニット型特別養護老人ホームにおけるスタッフの介護様態に関する研究~従来型施設との比較を通してみた考察 PDF
・異なる空間構成をもつ認知症高齢者グループホームにおける空間利用とかかわりの様態に関する研究 PDF
・高齢者福祉施設におけるPFI事業の実態に関する研究~PFI事業によるケアハウスの事例考察を通して PDF
2006年度
・高齢者専用賃貸住宅の居住実態に関する研究 PDF
・認知症高齢者グループホームにおける入居者とスタッフのかかわりの様態に関する研究 PDF
・ユニット型特別養護老人ホームにおける夜勤スタッフの介護様態に関する考察 PDF
・ユニット型介護老人保健施設における生活と介護の様態に関する研究 PDF
・地域開放された共用空間の使われ方に関する研究~複合型高齢者福祉施設における事例考察~ PDF
2005年度
・地方農村地域における要介護高齢者の実態と介護施設の利用に関する考察~宮城県K地域における事例から~ PDF
・高齢者福祉施設における参加型の計画・設計プロセスに関する事例考察 PDF
・高齢者介護施設の地域施設としての成立の可能性に関する事例考察 PDF
・ユニットケア型特別養護老人ホームにおける生活と介護に関する研究~利用者とスタッフとのかかわりからみた考察~ PDF
2004年度
・ケアハウスにおける居住者の住みこなし方と生活展開に関する事例研究 PDF
・認知症高齢者グループホームの生活に影響を与える環境要素に関する研究 PDF
・ユニット型特別養護老人ホームの生活に影響を与える環境要素に関する研究 PDF
・4つの高齢者居住施設における食堂での入居者及びスタッフの行為と介護の違いに関する事例研究 PDF
2003年度
・特別養護老人ホームの建て替え・移行に伴う生活と介護の変化に関する事例研究 PDF
2002年度
・介護スタッフの介護行為と空間利用に関する研究~旧型および新型特別養護老人ホームにおける比較調査を通して~ PDF
・アーケード型商店街における利用者の環境行動に関する研究 PDF
2001年度
・居寝室における居場所のつくり方に関する研究~大学生を対象とした分析から~ PDF
・一人暮らし高齢者の自立生活を支える環境要素に関する研究 PDF
・痴呆性高齢者グループホームにおける生活の展開に関する研究~4つのホームにおける調査を通して~ PDF
・痴呆性高齢者の生活行動に関する研究~Kグループホームにおける時系列的な調査を通して~ PDF
・ケア・居住単位の小規模化と入居者の生活との関わりに関する研究~特別養護老人ホームにおける事例考察~ PDF
【研究室の概要】
東北工業大学建築学部建築学科は、建築学を総合的に学ぶ教育環境と設備環境に恵まれており、現在は構造・材料・環境・歴史・デザイン・計画各分野にわたって14の研究室から構成されています。1学年120名近くが在籍する学科ですが、可能な限り個々の興味を引き出し、それぞれの個性を伸ばしながら、社会に貢献できる技術者育成を目指して教育にあたっています。大学院も設置されていて博士課程まであります。
当研究室は計画系研究室の一つで、施設計画研究が主なテーマです。特に、人とその人が暮らす環境との関わりに着目しながら、「高齢者施設や高齢者の居住環境に関する研究」を行っています。「建物の計画・設計につながる重要な情報は現場(フィールド)の中にある」を合い言葉にして、高齢者施設におけるフィールフォワークを中心に研究活動を行っています。建築は建物単体で成立しているわけではありません。
高齢者施設であれば、そこに暮らすお年寄り、介護スタッフ、家族、そしてそれらを包み込む空間すべてが一つになってはじめて建築として成立しています。そのことをもっともリアルに見せてくれるのが現場ですから、その現場から学びとってもらいたいと考えてさまざまな活動を行っています。
これまで、毎年8〜15名の卒業生を送り出し、修士4名、博士(国費留学生)1名を輩出しました。東北大学、名古屋大学の大学院に進学した研究室学生もいます。3年生の後期から研究室配属となるため、9月にはさらに3年生が10数名在籍することになります。
工業大学の建築ということもあり、少々「堅い」イメージもありますが、建築計画系のいくつかの講義をとおして、いかに建築が社会や人、そしてその暮らしとつながっているか、さらには文化や歴史、その国の制度とつながっているかということを伝えています。そのかいあってか、建築の「やわらかい」部分、各種学問との境界領域的な部分に興味を持って当研究室への所属を希望してくれる学生が多くいます。
研究室の研究テーマに多少なりとも興味を持っていることはもちろんですが、何より建築が好きなこと、どんなことにも興味を持って貪欲に探求する意欲的な学生を受け入れるようにしています。卒業研究もしくは卒業設計いずれか選択で取り組むのですが、研究に興味を持つ学生が多い年もあれば、設計に興味を持つ学生が多い年もあったりします。

【調査研究の準備】
4年生になると高齢者施設での計画研究を進めるにあたっての具体的な準備を始めます。書籍や論文を通しての勉強も大事ですが、何より施設とその中での暮らしの姿を見て、肌で感じること、自分の目で確かめることが、後々調査を実施するにあたってもとても大きな力なります。
したがって、近隣にある高齢者施設に足を運んで見学するような機会を、可能な限り設けるようにしています。新しい施設から古い施設まで、さまざまな状況を目の当たりにすることで、いろいろな問題意識も芽生えてきます。
出来るだけ早い時期に調査を始めたいところなのですが、学生の就職活動が夏休みまで続きますので、なかなかまとまった時間を取って、調査に向かうことが出来ません。気付くと調査を開始するのは夏も終わりにさしかかってからとなってしまいます。しかしそれまでの時間が、目には見えない力を蓄える時間となっているのではないか…とも思っています。

【調査研究を通しての社会経験】
4年の夏には研究室旅行も行っています。近隣県の先進的な高齢者施設を訪問し、設計者や運営者にいろいろな話をじっくりと伺う機会としています。
夏休みが終わると調査が本格的に始動します。経験のない中、とにかく半年間で論文を書かなければならないというのは、きわめて大変な作業です。卒業論文だからといって、手を抜くことは絶対にさせません。外部で発表しても恥ずかしくないだけの質と量、内容を備えた調査研究をさせるように心がけ、論文を書かせるようしています。そのことが大学生活の大きな思い出になるだろうし、何より社会に出てからも大きな力になるであろうと信じてやらせています。
研究・論文指導が出来る院生が多くいる大学とは異なり、調査の企画から、実施、データの集計、分析、論文執筆の指導まで一人何役もこなす必要があります。大変ですが、そのなかで学生一人ひとりと関わり合いながら、こちらも一緒に苦しむことが出来る時間を毎年持てるというのも、考えようによってはよいことかもしれません。
しかし、何から何までこちらでやってしまったのでは、こちらも身が持ちませんし、学生のためにもなりません。どのような調査でも、最初のアレンジだけこちらで行い、その後の調査の具体的実施にむけての施設側との打ち合わせなどは、出来る限り学生自身に行わせます。電話でのやりとりやアポイントメントをとって伺っての打ち合わせ、調査時の職員との対応、調査後のお礼や論文完成後や卒業の報告などを通して、自然と社会経験を積むことになり、マナーなども身に付いていきます。調査でお世話になる施設でボランティアに参加させたりもします。
多くが学部を卒業して社会に出る当研究室の学生たちにとっては、「研究論文を書く」ということ以上に、研究を通して得られる社会経験が、何よりも貴重なものではないかと思いますし、それができるのも建築計画の研究のよいところかと思っています。

【フィールド調査から得られること】
典型的なフィールド調査は、例えば朝から晩まで一日(時には何日も連続で、また時には夜間時も)施設に滞在し、施設の暮らしを追い、記述していくという手法です。お年寄り一人ひとりがどのような暮らしをしているのか、どのような場所で、どのような行動をしているのか、介護スタッフはどのような動きをして、どのような介護をしているのか。さらにその生活を支えている空間はどのようなものなのか。できる限り丁寧に、観察される状況を平面図上に記録していきます(写真7)。ビデオなどで撮って、後に分析する方法もありますが、はやり「その時、その瞬間」の場面が持つ意味、その雰囲気など、生きた時間と空間の中でしか味わえないことも多くあります。
このような調査を重ねていくうちに、いかに空間や生活環境が人々の暮らしや、それを支える介護に影響を及ぼしているのかということが自然と見えてくるようになります。暮らしの一場面一場面を見ていく中で、個々の暮らしの姿やその形、さらにはその人の過去の生き様まで断片的にでも見えてきます。「施設とはね…施設の暮らしとはね…」と、いくら口で言っても、教科書で学ばせても学生は全くイメージできませんし伝わりません。やはり現場しかないのです。
そこで得られた客観的なデータを、どのような視点で分析していくか。客観的な論述が求められる研究論文ですが、このような研究では、きわめて主観的な判断と感性が求められます。同じ行動場面を見ても、それをどのような意味としてとらえるのかは、観察者・分析者の視点、経験、感性にかかっていると言っても過言ではないでしょう。だからこそ、常日頃、さまざまな物事に対して「感じること」、「考えること」の力を磨かせることに力を入れたいと思いやっています。
【おわりに】
さて、研究室の雰囲気は伝わりましたでしょうか。学生の多くは、最初は「高齢者=福祉=バリアフリー(手すりを付けたり、段差をなくしたりする)」ということに興味をもっています。もちろんバリアフリーも大切ですが、学生には、そこに暮らす人の動きや生活を広い視点でとらえ、理解した上で部屋の広さやその配置、家具の配置やそのデザインなどの空間づくりに興味を広げ、さらにその空間をとりまく人のつながりや文化・社会制度などを含めた広い意味での環境づくりに興味を持ち、考えるようになってほしいと思っています。
建物は何十年も残るものです。建築とは今の暮らしを支えるものであると同時に、将来の生活を支える場ともなるわけです。研究室で経験したこと、学び身につけたことが、将来、さまざまな形で「建築」に携わる学生にとって、貴重な経験になればと願っています。
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